歯周病とは、何らかの原因によって、歯を支える周りの組織(歯茎や顎の骨など)が破壊される病気です。歯周病のほとんどは、歯垢(プラーク)中の細菌の増殖によって発生します。重度になると膿を持つようになりますので、以前は「歯槽膿漏」と言われていましたが、現在では歯周病、または、歯周疾患と呼びます。
厚生労働省の歯科疾患に関する調査によると、35歳以上の日本人の約80%が歯周病(歯槽膿漏)にかかっていることが分かりました。成人が歯を失う原因としては虫歯に次いで2番目ですが、40代以上の方が歯を失う原因では歯周病(歯槽膿漏)が最も多くなっています。歯周病(歯槽膿漏)は、毎日のケアと定期検診で防ぐことができます。病気についてよく知っていただき、予防と早期の治療を心がけていただくことをおすすめしております。
歯周病(歯槽膿漏)の進行
軽度(歯肉炎)
歯茎が炎症を起こし、赤く腫れたり、出血したりします。
歯と歯茎の境目付近に歯垢や歯石がついていますが、歯を支えている骨(歯槽骨)の吸収はありません。
歯周ポケットは3mm以内で、歯科医院で歯石や着色などの除去を受け、適切なブラッシングを行えば完治させることができます。
中度(歯周炎)
歯茎の炎症の他に、顎の骨の吸収(歯根を支えている歯槽骨の溶解)が始まります。
歯茎の腫れや出血が見られ、膿が出る(歯槽膿漏)こともあります。顎の骨の溶解が進むと、歯が前後左右にぐらぐらするようになります。
歯周ポケットが4mm~7mmまで深くなり、歯茎の下の歯根部分にまで歯垢や歯石が付着しています。
重度(歯周炎)
顎の骨の溶解がかなり進み、支えを失った歯が、上下方向にも動くようになります。
歯をかみ合わせると痛みを感じるため、食事に支障をきたすようにもなります。
歯周ポケットは、6mm~8mm以上となり、歯の周りに大量の歯垢や歯石が付着しています。
歯周病(歯槽膿漏)の特徴
自覚症状がないまま進行する病気です
歯周病の初期(歯肉炎)は、痛みなどの自覚症状がほとんどありません。痛みや出血、歯がぐらぐらするなどの自覚症状が出てきた頃には、歯周炎へ移行していることが多く、歯の周りの組織に大きなダメージがみられます。
歯周病は、歯垢(プラーク)中の細菌の増殖が主な原因ですので、クリニックで定期的なクリーニングを受けたり、毎日の生活の中でプラークコントロールを徹底したりすることで、発症を防いだり、軽度で食い止めたりすることが可能です。当クリニックでは、歯石取り・PMTC(歯の表面の着色や歯垢、歯と歯茎の間に溜まっている歯垢を磨いて取り除く治療法)・フッ素塗布(歯質の強化)などをセットで行うメンテナンスを実施しており、お口の健康を保つために定期的に受けられることをお勧めしております。
早期発見・早期治療で完治が可能です
歯周病(歯槽膿漏)の治療に来られた方のほとんどは、歯茎から膿が出るようになったり、歯がぐらぐらしたりするのが心配になったから歯医者に来ましたとおっしゃるのですが、このような自覚症状が出た頃にはすでに顎の骨(歯槽骨)が溶け始めており、元の状態に戻せることはほとんどありません。
歯周病(歯槽膿漏)は、できるだけ早い段階で治療を始めることが必要です。歯茎が腫れる、うずく、歯をみがくと出血する・・・などの症状がみられたら早めにお越しください。
全身の健康に重篤な悪影響を及ぼします
増殖した歯周病菌は、歯茎の血管を通じて血液中に、または唾液から身体の中に入り、病気の発症や進行しやすい要因となります。歯周病(歯槽膿漏)と糖尿病がは互いに深く関連して進行する病気で、一般的にも知られるようになってきました。その他にも、動脈硬化、心臓病、脳卒中、肺炎などの病気とも深い関わりがあります。
また、妊婦の方が歯周病を発症してしまうと、子宮の収縮が早まって早産となってしまったり、胎児の成長を妨げて低体重児となってしまったりすることがあります。定期的な検査とクリーニングを受ける習慣をつけることは、全身の健康維持にもなります。